言われれば

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言われれば

責任が求められる。決断はあらゆる可能性を吟味して慎重に下し、結果はいかなるものでも冷静に受け止めろ。そうでなければ対処を考えることもままならん。澪、おまえはいつも逆だろう。思うがまま考えなしに突っ走り、結果におろおろする……まるで小さな子供だ。それでは科学者としてやっていくのは難しいぞ?」
 痛いところを突かれた。
 今回のことも、考えが足りなかったとそのとおりだ。覚悟もなかったと思う。息もできないくらい胸が苦しくなり、じわりと涙が滲んできた。冷静に受け止めろと忠告されたばかりなのに——。
「まあ、このくらいにしてやるか」
「…………?」
 顔を上げ、濡れた睫毛で目を瞬かせる。剛三はフンと鼻から息を抜いた。
「後継者問題などたいしたことではないわ。おまえと悠人が結婚してくれれば話は早かったが、そうでなくても対処方法はいくらでも考えられる。これしきのことで橘財閥が潰れるわけなかろう」
「なっ……!!」
 一瞬カッとしたものの、どうにか激情を抑えてじとりと剛三を睨む。
「どうして騙したんです?」
「半分は意趣返し、半分は忠告だよ」
「……ご忠告、心に留めておきます」
 意趣返しなどあまりに大人げなさすぎるが、忠告は澪を思ってのことだろう。それがわからないほど愚かではない。言いようのない腹立たしさに眉を寄せながらも、努めて冷静に答え、そしてひとり密やかに考えをめぐらせる。もし本当に橘財閥が危機に陥っていたとしたら、自分はどうしただろうか、どうすればよかったのだろうか、と——。

 ふと、剛三が後ろに控えていた悠人に目配せした。彼はかすかに頷いてその場にしゃ
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